自動車雑誌ライター「高桑秀典」による突撃インタビュー 4Cラジアルタイヤ最速プロジェクト(RT1)の真意とは?

チャレンジプロジェクト
2017.12.01

●Vol.03

太田)しばらくして、することがなくなってしまったんです。最初は通勤に使ってみました。驚くことにすこぶる運転がしやすい。Aピラーが立っていて視界がいいんです。ホイールベースが短いので、狭い路地のカーブもすいすいです。燃費もいい。それまで通勤に使っていたアルファロメオ・ジュリエッタQVよりもよい。考えてみれば基本的にエンジンは一緒、でも4Cの方が圧倒的に軽いのですから当然ですね。

高桑)それなのに乗らなくなってしまった…。

太田)直接の原因はアバルト124スパイダーを導入したことです。そっちの方がちょい乗りには気を使わなくていい。すると4Cに乗る機会がぐっと減りました。

高桑)似た話は4Cのオーナーからも聞こえてきますね。ポルシェやロータスだったらイベントやオーナー倶楽部がたくさんあって、仲間がいっぱいできて充実したカーライフを楽しめる環境があるけど、4Cにはない。そして、ハイスペックだけど、内装が樹脂が多く、いささかチープという声も聞こえてきます。

太田)当初は、まずはできるだけ樹脂の部分を改善して内装品質を上げようと考えました。カーボン製パーツやレザーを効果的に配し、インテリアをラグジュアリー志向にしてみました。リアスポイラーもローンチモデルよりも少し大きめのデザインにしました。しかし、クルマの成り立ちがスパルタンなので、ラグジュアリーの極みであるフェラーリなどとは異なるアプローチ、つまりラグジュアリーな方向を突き進むのではなく、やっぱり走りなのかな、と。

高桑)デートカーという雰囲気ではないですものね。

太田)他ブランドのミッドシップ・プレミアムスポーツカーのように仲間と一緒に楽しめる場がなく、だからと言って、デートカーでもなく、購入したものの、次にはどうしたらいいのか分からなくなってしまった4Cオーナーがたくさんいると聞いています。その気持ちはよくわかります。でもそれではもったいないですよね。だとするとやっぱりサーキット走行かな。素性は抜群、頑強なカーボンシャーシだから安全性も極めて高い。サーキットを走らせなければもったいない。

高桑)たしかに、もったいないですよ!そして、サーキットを走るのはいいですね。

太田)走りに特化しよう。安心してアクセルを踏めるようにしよう。そこを目指したわけです。

高桑)なるほど。そうやって、安心してアクセルを踏める4Cができれば、オーナーたちもサーキット走行をもっと気軽に楽しめるようになるのでしょう。また太田さんが乗り方をレクチャーしてくれれば、なおいい。

太田)はい。

高桑)ところで、最速プロジェクトと聞くと、以前はサーキットでのタイムアップだけを狙って、徹底モディファイしているように感じていました。しかし、太田さんのお話を伺い、やっていることは、誰もが安心して乗れるクルマを製作し、その結果としてタイムアップにつながるという楽しみ方をユーザーに提案する。そして単にサーキット専用車を作るのではなく、一般道においても乗りやすいクルマを作るということだと思いました。

太田)なるほど、そういう視点は欠けていましたね。自分のやっていることをそのように解釈したことはありませんでした。

高桑)でもそうですよ。4Cオーナーに、扱いやすさと安心してアクセルを踏める楽しさ、ガチガチではない乗り心地を提供できるはずです。このロジックというか手法はすべてのクルマに応用できると思うので、幅広いユーザーに実感してもらえたらいいですね。

Vol.04へ続く。