いまさらながらのアバルト再考。

クラシケ
2017.12.21

 筆者は1971年式なので、クルマに興味を持ちはじめた時分にはすでにアバルトはフィアットの傘下に入っていました。時が流れ、1971年に生まれたクルマ大好き人間が運転免許を取得した頃、現実的な予算でアバルトを買おうと思った場合にA112アバルトもしくはリトモ アバルトが最良の選択肢でした。本当にギリギリのタイミングでしたが、まだまだ元気に走るA112アバルトやリトモ アバルトが数多く現存していたのです。

 フィアット131アバルトは、すでに雲の上の存在だったように記憶していますが、今になって思うとリトモ アバルトを愛車候補の筆頭に挙げることができただけでも、それはそれで大変貴重な経験をさせてもらったと思うべきでしょう。

 しかしアバルトに関して、刺激的かつ趣味性が高いクルマに乗って存分に楽しめたのは’80年代の終わりぐらいが最後でした。というのも、初代プントのスポーティ仕様が「アバルト」を名乗るようになってから、少しずつ状況が変わっていってしまったからです。つまり、アバルトに対する世間のイメージが過小評価方向に変化していってしまったといえ、別の言葉で説明すると、次第にアバルト=エアロパーツや専用アルミホイールや派手なインテリアでスポーティさを演出したグレードといった認識になってしまったわけです。

 カルロ・アバルトが1949年に設立した「Abarth & C.」が、フィアット1100をベース車両とした204 A ロードスターでレース界にデビューしたエピソードなどを知っている方はアバルトの本質を熟知していましたが、復権を願っているはずのフィアットが2代目プントにおいてもアバルトの名を冠しただけといえるスポーティグレードを再設定したこともあり、しばらくの間は状況が好転することはありませんでした。

 エンブレムのサソリから少しばかり毒を抜いたような“アバルト・グレード”がフィアットからリリースされ、復権どころではない空気感がイタリア車フリークの胸中を支配していましたが、2007年に、かつてのように独立したメーカーとしてのアバルト&C社が動き出し、ようやく待ちに待った本気モードのモデルとしてアバルト グランデプントがラインナップされました。説明するまでもなく、その後のアバルトはモータースポーツ・シーンでの活躍などにより、年々その存在感を強めていきました。

 ちなみに、現在、筆者は1998年に購入した1974年式アルファ・ロメオGT1600ジュニアと新車で買った2011年式フィアット 500Cを愛用していますが、長い間、これから増車するのであればランチアだよな、と考えていました。ツインエア・エンジンを搭載しているイプシロンが非常に魅力的で、今でも欲しいので、ランチア購入計画を簡単に捨て去るわけにはいきませんが、ここ最近、アルファ/フィアット/アバルト体制でもイイかな、と真剣に思っています。本当はアルファ/フィアット/アバルト/ランチア体制を実現できたら最高なのですが、さすがに4台体制を達成・維持できる経済力は無いので、当面はアバルトを次期愛車候補の最右翼として頑張っていくつもりです。

 アバルト 595と124 スパイダーのどちらにするかで悩むところですが、フラットノーズのジュニアと4気筒エンジンの500Cを所有している天の邪鬼としては、やはり、5速マニュアルトランスミッション/左ハンドル仕様のアバルト 595をチョイスするべきだろうと思っています。いつの日にか、外しの美学というキーワードで語れそうな3台を並べることができたら、早速、当ページで写真をアップしたいと思っています。

文:高桑秀典