自動車雑誌ライター「高桑秀典」による突撃インタビュー 4Cラジアルタイヤ最速プロジェクト(RT1)の真意とは?
チャレンジプロジェクト
2017.11.10
●Vol.01
(高桑)取材でサーキットに伺った際、太田さんが「アルファロメオ4Cを乗りやすくするアプローチ」と言っていました。しかし、それと「RT1企画(4Cラジアルタイヤ最速プロジェクト)」が今一つ僕の中で重なりません。その辺からお聞きしたいと思います。
まずは太田さんと言えば、ル・マン24時間レースでのフェラーリF40GTEやMAZDA787Bをはじめとする数々の本格的なレーシングカーやスポーツカーを乗りこなしてきたわけですが、そうした太田さんの目には、アルファ4Cはどう映っているのでしょうか?
(太田)面白いけど、難しい(笑)。
(高桑)難しい、ですか……。でも、アルファロメオ4Cは、カーボン製バスタブ型モノコック、FRP外板、アルミ製サブフレームなどを採用したライトウェイト・スポーツです。戦闘力はかなり高いはずですが。
(太田)潜在能力は相当高いと思います。ただ、多くのドライバーにとっては、扱いにくく感じると思いますよ。私自身、最初は(その挙動の)意味が分からなかった。でも走り込むうちにわかってきました。そしてもっとこうしたら乗りやすくなる。もっと速くなる。そこでRT1企画を思いついたんです。
(高桑)ちょっと待ってくださいよ。その「乗りやすくなる」と「速くなる」がリンクしていること自体がわかりません。
(太田)なるほど、では詳しく説明しましょう。例えばフェラーリF40GTEはル・マンで時速360キロくらい出ますが、サスペンションはガチガチではなく、むしろオールマイティ度を高めたセッティングにしています。ガチガチだったらロング・スティントをドライブする気になりませんよね。限界は高いがそこを超えた領域でスパっとブレイクしてしまうような固いセッティングでは、怖くてアクセルを踏みません。それに途中で雨が降ってくることもあるわけです。
パワーがないクルマであれば、極端な話、足を固めれば限界が上がってタイムが向上するでしょう。しかし高性能マシンは足を固める=限界が上がる=タイムが上がるとはなりません。ドライバーが安心してアクセルを踏めるように、あえて挙動をマイルドにする方向にしておくことが速さにつながる場合が多いのです。
(高桑)確かにビビっていたら踏めないですもんね。
(太田)そうです。人間とはそういうもんです。アルファ4Cはそうした超弩級マシンほど怖いわけではないですが、それでもシビアな挙動を示す要因があります。
(高桑)それはどんなものでしょうか?
(太田)ひとつはショートホイールベース/ワイドトレッドです。機敏な動きをしてくれる半面、セッティングが出ていないとナーバスな挙動をしめします。さらに横置きエンジンの重心位置が高いことも一因です。最初のうちはオーバーステアな挙動に悩まされました。私ももう現役ではありませんから、ねじ伏せるような運転は辛いですから(笑)。
ふたつめはターボラグです。これは弱点というより、キャラクターですね。エンジン特性がドッカン・ターボ系なので、手前からアクセルを踏んでおかなければなりません。それゆえ難しい、でも楽しいとも言えます。ミニF40とも呼べる、4Cの魅力と捉えるべきでしょう。
(高桑)最初にサーキットで乗った時の印象はどうでしたか?
(太田)富士スピードウェイの高速コーナーを走った際に「怖い」と感じました。とくにうちの4Cはリアのスタビライザーがないタイプだったこともあり、特に高速コーナーで挙動が不安定でした。安心してアクセルを踏めるようにしたいと思いました。
(高桑)それでどういう分析を?
(太田)なぜ挙動がナーバスなのかを分析することから始めました。そうすることで4Cのことがよく分かるし、作り手の精神性に近づくこともできて楽しいとも思いました。
(高桑)作り手の精神性に近づくというのは、クルマ好きにとって究極の楽しみ方かもしれませんね。
Vol.02へ続く。