アバルト TEZZO 595 RT1に試乗(撮影&執筆者:フリーランスエディター/ライター 高桑秀典)

TEZZO CARSインプレッション
2020.04.15

最高出力180ps仕様のアバルト 595 コンペティツィオーネ(シリーズ4)をベース車とした「アバルト TEZZO 595 RT1」は、大人が乗って日常的に使えるデイリースポーツです。今回、自宅に乗って帰り、仕事およびプライベート(外出は、できるだけ自粛しています)の足として数日間使ってみましたが、公道での普段使いが楽しい、快適・快速仕様に仕上がっていることをじっくり確認できました。

なお、TEZZO CARSが限定生産しているコンプリートカーには、速さと快適性が高い次元でバランスしたスポーツ&ラグジュアリー仕様の「LXY」と、サーキット走行において、より一層の速さを引き出すためのオリジナルパーツを装着した「RT1(ラジアルタイヤ・ナンバー1)」という2種類のコンセプトがあり、試乗したのは後者にあたるアバルト TEZZO 595 RT1です。しかし、LXYの要素を極めつつ、RT1化が進められているので、既述したように公道での普段使いが楽しい、快適・快速仕様なのです。

筆者は来年の3月で50歳になりますが、このぐらいの年齢になると“足まわりがポンポン跳ね、爆音マフラーが装着されている子どもっぽいボーイズレーサー”に乗るのが正直シンドイので、サーキットをメインターゲットとしながらも乗り心地のよさと排気音量が考慮されているアバルト TEZZO 595 RT1のセッティングは、まさにストライクゾーンのド真ん中にあるものだといえます(ハッチバック車が大好きなので、現在、2011年式のフィアット 500Cを愛用しています)。

具体的に説明すると、足まわりがしっとり動くサスペンションに変更されており、とにかく乗り心地がいいのですね。アバルト TEZZO 595 RT1の足まわりは、TEZZO全長調整式車高調 for アバルト500/595/695 フルキットで性能アップを図っています。アバルト500/595/695は車体の構造上、リアの足まわりにスペースの余裕がなく、サスペンションのストローク量が足らなくなっています。そのため、リアを全長調整式車高調にしてもストローク量が少なくなり、乗り心地と走行性能の面で不利になるのですね。そこでTEZZOでは、リアにストローク量を確保できるTEZZOオリジナルのローダウンスプリングをセット。ダンパーを別タンク式としています。

別タンク式を採用したことで、高性能リアダンパーの全長をすべて使ったストローク量を確保することが可能となり、乗り心地のよさと高い走行性能を両立させることができています。フロントのショックが全長調整式車高調なので、リアも姿勢のバランスをしっかりとれるセッティングであることも特徴のひとつです。500/595/695はリアタイヤをうまく接地させ、グリップ力を保ったほうが走りやすいので、別タンク式リアダンパーはサーキット走行時にも真価を発揮します。

そして、マフラーがアイドリング時の排気音は控えめながらもアクセルを踏むとスポーツカーらしい明快かつ心地よい澄んだサウンドを楽しむことができるTEZZO lxy スポーツマフラー for アバルト 595 コンペティツィオーネ MT 180ps(サイレンサーの内部を純正のような仕切り板で閉ざす構造ではなく、サイレンサーの内部をストレート構造とし、独自の仕組みで排気の抜けのよさと消音を実現。排気抵抗がなく、高回転まで気持ちよく回る)に変更されているので、朝晩の始動時や街中での走行時に気を遣う必要が一切ありませんでした。

じゃじゃ馬的な楽しさがあるアバルト 595ですが、そのようなハイスペックなクルマをカスタムするにあたり、TEZZOが心がけたのは、硬い、うるさい、スパルタンではなく、ECUチューン-DTT(デジテック by TEZZO)で大きくパワーアップしながらも、ドライバーとのコンタクトに関しては“クルマと格闘する”のではなく“クルマと対話する”ということでした。別の言葉で説明すると、ショートホイールベース、ナロートレッドのアバルト 595をうまく躾けることを目指したわけです。

大幅にパワーアップしており、登り坂がこの世から消えたかのような熱い走りを楽しめますが、スポーティながらも総じてジェントルなので、こういうデイリースポーツに毎日乗りたいな、と、心の底から思ったことを最後にお伝えしておきます。

文&写真:高桑秀典