このタイミングだからこそアバルトを再考。

クラシケ
2024.06.25

 筆者は1971年生まれなので、クルマに興味を持ちはじめたとき、すでにアバルトはフィアットの傘下に入っていました。時が流れ、運転免許を取得できた頃、現実的な予算でアバルトを買おうと思った場合に選択肢となったのは、A112アバルトとリトモ アバルトでした。本当にギリギリのタイミングでしたが、まだまだ元気に走り回るA112アバルトやリトモ アバルトが現存していたのです。

 131アバルトは、すでに雲の上の存在だったように記憶していますが、いまになって思うとリトモ アバルトを愛車候補の筆頭に挙げることができただけでも、それはそれで大変貴重な経験をさせてもらったと思うべきでしょう。

 その後、少しの間、アバルトのラインナップから刺激的かつ趣味性が強いクルマが消えてしまいました。というのも、初代プントのスポーティ仕様がバッジエンジニアリング的に「アバルト」を名乗るようになってから、少しずつ状況が変わっていってしまったからです。

 つまり、アバルトに対する世間のイメージが過小評価方向に変化していってしまったといえ、別の言葉で説明すると、次第にアバルト=エアロパーツや専用アルミホイールや派手なインテリアでスポーティさを演出したグレードといった認識になってしまいました。

 カルロ・アバルトが1949年に設立した「Abarth & C.」が、フィアット 1100をベース車両とした204 A ロードスターでレース界にデビューしたエピソードなどを知っている方はアバルトの本質を熟知していましたが、復権を願っているはずのフィアットが2代目プントにおいてもアバルトの名を冠しただけといえるスポーティグレードを再設定したこともあり、しばらくの間は状況が好転することはありませんでした。

 エンブレムのサソリから少しばかり毒を抜いたような“アバルト・グレード”がフィアットからリリースされ、復権どころではない空気感がイタリア車フリークの胸中を支配していましたが、2007年に、かつてのように独立したメーカーとしてのアバルト&C社が動き出し、ようやく待ちに待った本気モードのモデルとしてアバルト グランデプントがラインナップされました。説明するまでもなく、その後のアバルトはモータースポーツ・シーンでの活躍などにより、年々その存在感を強めていきました。

 ちなみに、現在、筆者は1998年に購入した1974年式のアルファ・ロメオ GT1600ジュニアと新車で買った2011年式のフィアット 500C、そして、個人売買で昨年ゲットした2016年式のフィアット 500ツインエアを愛用していますが、長い間、これから増車するのであればランチアだよな、と考えていました。

 初代イプシロンのエクステリアデザインが非常に魅力的で、いまでも欲しいので、ランチア購入計画を簡単に捨て去るわけにはいきませんが、ここ最近、アルファ/フィアット/アバルト体制でもイイかな、と思っています。

 本当はアルファ/フィアット/フィアット/アバルト/ランチア体制を実現できたら最高なのですが、さすがに5台のイタリア車を完調をキープしたまま維持管理できる経済力は無いので、当面はアバルトを次期愛車候補の最右翼として頑張っていくつもりです。

 500/595系と124スパイダーのどちらにするかで悩むところですが、既報のとおり124スパイダーは人気が再燃し、現在、良質車は400万円ぐらいで流通しています。これは、なかなか買えないので、左ハンドル仕様のアバルト 500を150万円以下で購入するべきだな、と思っています。初代イプシロンまで購入できたら、もうアガリですね。

文:高桑秀典